ぼくには数字が風景に見える

ぼくには数字が風景に見える

「ぼくには数字が風景に見える」は、アスペルガー症候群サヴァンでもある著者 Daniel Tammetが、自分の言葉で自分が見ている世界について綴った手記です。

本書はこんな書き出しで始まります。

ぼくが生まれたのは1979年の1月31日、水曜日。水曜日だとわかるのは、ぼくの頭のなかではその日が青い色をしているからだ。水曜日は、数字の9や諍い(いさかい)の声と同じようにいつも青い色をしている。ぼくは自分の誕生日が気に入っている。誕生日に含まれている数字を思い浮かべると、浜辺の小石そっくりの滑らかで丸い形があらわれる。滑らかで丸いのは、その数字が素数だから。31、19、197、97、79、1979はすべて、1とその数字でしか割ることができない。9973までの素数はひとつ残らず。丸い小石のような感触があるので、素数だとすぐわかる。ぼくの頭の中ではそうなっている。

全編にわたりこうした感覚的な表現が使われていて(これは共感覚と呼ばれる)、普段なかなか知る機会のない「サヴァンの人が見た世界」を垣間見ることができ、とても興味深い内容になっています。18歳の時に、生まれ育ったロンドンを離れ単身リトアニアにボランティアに行く決心をしたりするあたりでは、彼が彼なりに将来を案じている様子が丁寧に書かれていて感心してしまいました。

「なるほどなー」と思った箇所をいくつか。

自閉症スペクトラムの者には、インターネットでほかの人々と言葉のやりとりをするのは刺激的なことであり、それによって自信が持てる。第一、チャット・ルームでの会話や電子メールのやりとりでは、直接会って話す場合に必要な集中力がいらない。会話をはずませる方法や、笑みを浮かべるタイミング、ボディランゲージの意味を読みとる必要がない。アイ・コンタクトもいらないし、すべては文字になっているのでどんな言葉でも意味が汲みとれる。チャット・ルームでは、:-)や:-(などの絵文字を使えば、相手がどんな気持ちでいるかよくわかる。

P.166

自閉症スペクトラムの人々は、就職先の企業や組織に多くの利益をもたらすとぼくは思っている。というのも、こうした人々は正直で責任感が強く、正確な知識があり、細部にまで注意が行き届き、さまざまな事実や人物について優れた知識を持っているからだ。また、自閉症やアスペルガー症候群の人を採用すると、社員は多様性に敏感になり、管理者は効果的に意思の疎通を図る方法を学べるようになるだろう。

P.172

ぼくはずっと動物が好きだった。子供のころにはテントウ虫に魅せられ、野生動物が登場するテレビ番組を夢中で見た。ぼくが動物好きなのは、動物のほうがたいていのひとより辛抱強く、素直だからだと思う。

P.177

ぼくは思春期に入るまで、両親や弟や妹に強い感情的な絆を感じたことはめったになかったし、家族がいなくても寂しく思うことはなかった。そのころは家族がぼくの世界の一部ではなかったからだと思う。ところが、いまはまったく違う。家族がいかにぼくを愛し、ぼくのためにこれまでいかにたくさんのことをしてくれたかよくわかっている。成長するにつれて、家族との関係はどんどんよくなってきた。

P.248

また、本書では2005年にテレビ番組「Late Show with David Letterman」へ出演するところがハイライト的に描かれており、

インタビューの終わりにデイヴィッドと力強い握手をした。ぼくが戻ってくると、楽屋にいた全員が歓声をあげ、ベスはおめでとうと言って喜び、テレビの画面のなかでぼくがいかに落ち着いて穏やかに見えたか話した。この経験のおかげで、自分が世の中でうまくやっていけることが改めてわかった。

短い時間で旅行の支度をし、ひとりでホテルに泊まり、人でごった返した通りを異様な光景や音やにおいにひるむことなく進んでいくという、たいていの人なら普通にできることがぼくにもやれるということがわかったのだ。これまでの努力は無駄ではなかった。それどころか、その努力があったからこそ無謀すぎる夢だと思っていたことまでも手に入れることができたのだ。そう思って、ぼくは高揚した気分を味わった。

P.247

このあたりがなかなか感動的なんですが、その時の番組がYouTubeにあがっているので興味のある方はそちらも是非見てみてください。3:00からのパイとπのくだりは秀逸です。

Comments are closed.